アドラー心理学で一緒に考えてみませんか

アドラー心理学カウンセラーの鍵野が気になったことのあれやこれやを綴ります

経営コンサルティングにアドラー心理学を活かせるか

こんばんは、鍵野です。
今日は雨で気温も高くなくクーラーなしで過ごせました。やっぱりまだ梅雨だったんですね。ここのところ暑かったので髪も短いのがいいだろうと、自分としてはかつてない短いインターバルで散髪してきました。ほぼお任せで切ってもらうんですが、ただ髪が立ってしまいがちなので、そこだけそうならないようにお願いしています。するとトップのボリュームはある程度必要になるようで思ったよりも短くはなりません。髪の毛も無常ですね…、昨日と今日でそんなに違いはないようだけれど、ひと月もしたらずいぶん違ってる。ホントは瞬間瞬間変わっている(伸びている)んでしょうけれども。お釈迦さまが渡した一輪の花を観察して覚った方がいらっしゃると聞きましたが、髪の毛では難しそうですね(笑)。お坊様方のように剃髪していたらいち早く変化がわかるのかもしれませんが、あれはあれでメンテが大変そうですよね。無精者にはハードルが高いなぁ(笑)。


今日は経営コンサルタントという仕事とアドラー心理学について考えてみたいと思います。先日、ある先輩から聞かれたんですよね。経営コンサルティングアドラー心理学を活かせるのかどうかというようなことを。


結論から言えば、「はい、活かせてます」なんです。が、これにはかなり長い修行期間を経てですね、カウンセラーの試験に合格できてからですね、実際に活かせるようになったのは。


経営コンサルタントとしては、独立開業してからもう少しで丸12年になります。数えてはいませんがある機関でディレクターとして関与していたものも含めればこれまで数千件以上の相談を受けてきました。様々な業種の様々な経営者さんの、経営的に困っているお話が多いわけですが、たっぷり聞かせてもらってきました。


それで、勘違いしていて、カウンセリングも似たようなものだろうと、ちょっと高を括っているところがあって、最初のカウンセラー養成講座を受講した時点でたいした練習もせず、ほぼぶっつけ本番でアドラー心理学カウンセリングの実習に臨んだのでした(笑)。いやぁ、無謀ですよね、自信過剰というか、世間知らずというか、まぁ、自分のストレンクスでもあるんですが、あの虎の穴とも呼ばれるカウンセラー養成講座をろくにカウンセリングをしたこともないのに受けるなんてねぇ(笑)。


もちろん、結果は、まぁ箸にも棒にも掛からないというか…、カウンセラーとしては何にもできない自分に嫌というほど直面する8日間でした。試験も受けるには受けたとは思いますが、もちろん納得の不合格で(笑)、そりゃぁカウンセリングとして動いてないのが誰の目にもはっきりわかる状態でしたから当たり前なんですが。


お金をいただいて、相談を受けて、解決のアドバイスをするんだから、似たようなものでしょと思ってたんでしょうね…きっと。なんかもうあまり覚えていないんですけど(笑)。


これ、全然違うんですね。経営コンサルタントとして、経営者さんが相談に来られるとき、どうしても自分が「先生」になっちゃうんですね。実際、先生って呼ばれることが多かったですし。鍵野のコンサルティングでは、その経営者さんがどうしたいかを大事にそこからアドバイスをするという点は当初からとても大事にしていたんですが、そうは言っても、やはり、こちらが解決策を知っている人、相談に来られた人は解決策を知らない人という立ち位置になりやすくて、どうしても「助けてあげなくては」というモチベーションで動きがちでした。


アドラー心理学カウンセリングは、そりゃぁアドラー心理学については、こちらの方が知っている人、相談に来られた方は知らない人という非対称なポジションになるのは、まぁ前提でいいんですけれど(仲間同士のカウンセリングでは相談者の方が知っていることもよくあるんですが(笑))、「助けてあげなくては」ではカウンセリングは動かないんですね。


カウンセラーも相談者も対等平等で、相互に尊敬し合い、信頼し合って、相談目標を一致させた上で、協力して取り組む、一緒に手を携え合って歩いていくのがアドラー心理学カウンセリングなんですね。なので、一方的に助けるんではなく、助け合って進んでいくものなんですよね。とくに「信頼」ですね。今は困っているようだけれども、そもそも相談者さんには自分の問題を解決する力があることを信頼できなければ、アドラー心理学カウンセリングは成立しません。


ここがですね、「いや解決できないから、高いお金を払って相談に来てるんでしょ!」という、もっともな主張ではあるんですが、アドラー心理学カウンセリングでは、「解決できなくてもこちらはちっとも困りませんよ」という薄情さというかクールさはどこかで持っておかないと危ないんですね。もちろん、カウンセリングをすることに同意したら、そこからはカウンセラーも引き受けた以上は、自分の課題にもなっているわけで、「困りません」じゃなくて解決したいし、そうじゃないとやっぱり「困る」んですが、でも、相談者さんを飛び越えて、相談者さんより先に困ってはいけないなぁとは思っているんです。やっぱり、このままでいいです、という選択を相談者さんがするのであれば、「そこをなんとか」(笑)ではなく、「そうですか、わかりました」とクールに引ける姿勢は大事なんです。もちろんそういう選択をしてしまう相談になったことへのカウンセラーとしての責任は引き受けて、力不足もあるでしょうし、どこかで失敗したのかもしれないし、でも、そういうことはあり得るという覚悟はいつも持ちながらカウンセリングに臨んではいます。


その辺りが、カウンセリングよりもフィーが高いせいもあるかもですが(笑)、「助けてあげなくては」「解決してあげなければ」ってなっちゃいがちなんですよ、経営コンサルタントとしては。まぁ実際心理的な問題ではなく、具体的な経営課題の解決にフォーカスすれば、相手が乗り気じゃなくても、何かやれることの提案はできますのでね。「お手上げです、さようなら」となったことはないと思います(笑)。


なので、今から思えばアドラー心理学カウンセラーになるのに、経営コンサルタントの経験はかえって邪魔になったんです。その「助けてあげなくては」から脱却するのに、たくさんの時間が必要でした。カウンセリングの実習もたくさんしましたし、前にも書きましたが、決定的だったのは、その「助けてあげなくては」というのが結局は自分の成功を望んでいるだけの欲から来ていて、本当に相談者さんの目で見て耳で聞いて心で感じてのカウンセリングになっていなかったことに気づいて、その自己執着から脱却するために、お釈迦さまの瞑想、ヴィパッサナー実践をするようになって、それでようやく毎回ではないけれど、たまにはアドラー心理学カウンセリングらしい動きができるようになってきたんですね。


その後、なんとかカウンセラー試験に合格できて、カウンセリングもするようになって、それでですね、経営コンサルティングの方も微妙に変わったんですね、スタイルが。相談者さん、経営者さんを、信頼できるようになったんですよ。といっても経営面というよりは心理面でではありますが、結局、会社の経営成績の結果を引き受けるのは経営者さんご本人だし、こちらの知っていることはお伝えするし、経営計画策定などの技術的な部分についてはもちろんプロとしてお手伝いはするんですが、でも、最終的にはカウンセリングと同じで、経営者さんの課題なんですね、やっぱり。解決できないと、プロの経営コンサルタントとして格好悪いというのはあるんですが(笑)、でもしょうがないですよね、こちらも手を尽くして、それだけの力しかなかったんだと素直に認めることができるようになったんですね。


思い返せば、たくさんの経営者さんの相談を受けてきて、それでも結局その後、会社は倒産(会社のたたみ方にはいろんなパターンがあるので、プロはこの言葉はあまり使いませんが)したということもたくさんあったんですね。救いは、みなさん知っている限りはその後の人生をその方なりにがんばって暮らしてらっしゃることです。経営者じゃなくなっても、人生は続きますから。


長くなりましたが、もう少し具体的にアドラー心理学を経営コンサルティングに活かしている場面としては、経営者さんの早期回想(小さいころの思い出)をお聞きして、その方のライフスタイルをある程度知った上で、今後の経営方針、経営計画立案の参考にしているところですね。


これができるのは日本にそんなにいないんじゃないですかね。経営コンサルタント中小企業診断士)でありアドラー心理学カウンセラーでもある鍵野ならではの活かし方かなと(あっ、日本アドラー心理学会でもなく野田俊作顕彰財団(AIJ)でもないけれど、本をたくさん書かれている有名な人にいるなぁ…お会いしたことはないけれど(笑))。


このライフスタイルからその経営者さんのストレンクスを活かして人生の優先目標の方向も意識しながら、経営を進めていける経営計画はお役に立てていると思います。たとえ経営成績は振るわなかったとしても、その経営者さんが小さいころから求めてきた方向を向いているので、モチベーションが違います。でも、ですね、それがわかってしまうことで、現在の経営状況、資本関係とか貸借関係とか取引関係とか社員との関係とかが、違うんだ!と気づいてしまって、大きな方向転換をしたくなって、結果として、その方、経営者ご本人はいいけれども、周りの人にとってはよくない結果を引き起こすトリガーになる恐れもあって、そこは慎重に取り扱う必要があるとは思っています。 


でも、これってカウンセリングも一緒ですね。その人の目標追及の実現を応援して周りの人が不幸になるのではアドラー心理学カウンセリングではありません。自分も相手も周りの人も幸せな方向に舵を切れるようにお手伝いしていかないとですね。そういう意味で、アドラー心理学カウンセラーが経営コンサルティングをしたら、やっぱり目指すのは共同体感覚の育成だなぁ、おなじだなぁと、書いていて気づくことができました。


ただ、経営者としては、そんなことまで求めてないよ!っていうことは十分あり得るので、そこは冷静に最初の契約時にしっかり目標の一致をしておいて、途中でも何度も確認して進まないといけませんね。


そういう意味で、アドラー心理学カウンセリングであれば、レベルはいろいろあったとしても「共同体感覚」で合意できなければ(その用語そのものでは言いませんが)そこでアドラー心理学カウンセリング終了となるわけですが、経営コンサルティングでは、「共同体感覚」を受け入れてくださる経営者の方もいらっしゃるし、そんなのいいから目の前の問題を解決したいというニーズに応える場合もあるので、同じではないことはいつも肝に銘じている必要はありますね。「「共同体感覚」を目指す経営者の方の相談しか受けません!」としてしまったら楽でしょうけれど、それでは仕事にあぶれそうです(笑)。

 

はたしてアドラー心理学カウンセリングを学んで新しい経営コンサルティングに進化したんだろうか? それとも退化?(笑)
福岡市博物館で開催中の大哺乳類展もおすすめです。系統樹分子生物学の発展でかなりアップデートされているようです。 


読んでいただきありがとうございます。

みなさまどうぞよい夜をお過ごしください。


生きとし生けるものが幸せでありますように。