アドラー心理学で一緒に考えてみませんか

アドラー心理学カウンセラーの鍵野が気になったことのあれやこれやを綴ります

離婚経験者が夫婦関係を語る

こんにちは、鍵野です。
「2023年性年代別に見た配偶者との関係の満足度(50~79歳の男女既婚者:300名)」(ハルメク 生きかた上手研究所調べ)というのを見たんですが、面白かったのが、50代と70代では、男性の方が女性よりも満足度が高く、60代では女性の方が満足度が高かったことです。これ、その世代の傾向と考えたら、このまま現在の60代が70代になったときも、現在の70代とは違って、女性の方が満足度が高いままになるでしょうし、いつの時代でも50代、60代、70代という絶対的な歳に関係して満足度が変わると考えたら、今は満足度の高い60代女性も、70代になれば満足度が低くなることになります。どうなんでしょうね?


アドラー心理学で考えると、一番ありそうなのは、今の夫婦関係がよい夫婦はその後もよくて、よくない夫婦はその後もよくないんだろうなということです。同じ人間が同じ人間と関係し続けるわけで、どちらかが、アドラー心理学を学ぶというようなことがなかったとしたら、きっとそのままいくでしょうと。世の中の共通感覚は気にはしますが、50代はこう、60代はこうと類型に当てはめて考えるのは、一人ひとりがユニークな存在と考えるアドラー心理学的でないので、夫婦についてもそれぞれユニークな存在だと考えます。


それで、歳を取れば誰だって程度の差こそあれ、身体も衰え頭も衰えます。老いに伴う様々な問題が出てくるわけですが、関係がよければお互い助け合いながら問題はありながらもなんとかしていくでしょうし、関係が悪ければ、問題をより一層大きくしてしまうかもしれません。だから、やっぱり夫婦関係はよい方がいいと思いますし、もし、今、あまりよくないのであればよくしていく努力ができたらいいなぁと思います。


歩み寄れないような問題であれば、お別れするのがいい場合もあると思いますが、自分が離婚経験者で言うのもなんですが、おススメではないんですよね、特にお子さんがいらっしゃるとかであれば。だって、子どもにとってはいつまでもお母さん、お父さんですからね、そのどちらかと離れるというのは、よっぽど子どもから嫌われているのでなければ、子どもにとって大変辛いことでしょうし。


妻も夫も子どももみんなで話し合って、離婚することがみんなのためにもいいという結論が出たのであればいいのですが、そもそもそんな風に家族で話し合える夫婦なら離婚はしないような気がしますしね(笑)。


夫婦間の争いのネタは多岐にわたりますが、結局はそれぞれの価値観がぶつかって問題(と感じられること)が起こっているわけです。そのぶつかっている価値観の親玉をアドラー心理学では私的意味づけと言います。その私的意味づけに従って、その人愛用の方法でもって、よくない状態をよい状態にするために、行動しようという、その人ユニークな人生の論理を、ライフスタイルといいます。で、そのそれぞれユニークなライフスタイルが、夫婦という暮らしの中で、ぶつかりやすいか調和しやすいかという相性的なものは、やっぱりあるわけです。自分で決めた通りに動きたい妻さんと、誰かが決めたことについていきたい夫さんであれば、あまりぶつからないかもしれませんが、どちらも決めたい人、あるいはどちらもついていきたい人同士の夫婦だったら、ぶつかりそうですよね。これ、誤解のないように言っておきたいんですが、ついていきたい人は、別に奴隷になりたいわけではなく、「決めてもらったらついていく」と決めている人だというだけで、全人類どこを探しても、人より価値が下の人になりたいなんて人はいません。価値観がぶつかって、怒りとか悲しみとか不安とか陰性感情を使って、相手を自分の価値観に従わせようとして行動したら、必ずそれまでよりも仲が悪くなります。だって、それは、自分の価値観が正しくて相手の価値観が間違っている、私に従いなさい、私の価値の方があなたの価値より上だ、あなたの大事にしている価値は劣等だと主張していることになりますから。


本当は、どちらの価値観もただのその人の価値観なので全然正しくないんです。「いただきます」と言ってから食べるべきという主張があったとして、そんなの全然正しいわけではないです。日本の家庭の多くは今でもそうしていると思いますし、鍵野もそうしていますが、そうしない人を裁く権利はありません。でも、自分の子どもにはそれを教えますよね。その通りするのが当然と思ってきたし、それを疎かにする場面を目撃しようものなら「ちゃんといただきますしなさい!」って陰性感情を使って、子どもに言ったことも何度もあったと思います。でも、これ、日本人として日本の文化を受け入れて、暮らした方が便利だというだけで、それをしなければ人でなしになるというようなものではないですよね。他の国の人はそれをしなくても暮らせているわけだし。


夫婦間の問題、トラブルも結局はそんなところがぶつかっているだけなんですよね。だけと言っても我慢できないものもあるかもしれません。我慢できなかったら、1.相手から離れるか、2.相手に変わってもらうか、3.自分が変わるかしかありません。アドラー心理学のおススメは、まずは3で、自分が変わることです。


鍵野の場合ですが、元妻のあることが嫌で、最初は、2.相手に変わってもらうことにチャレンジしました。話しましたし、本を買ってきて渡したりしましたが、いっこうに変わってくれませんでした。今、思えば笑ってしまいますが、自分は正しい、正しいんだから、相手もわかってくれるはず、変わってくれるはずと思っていました。何をしても、いっこうに変わる気配がないので、それで、もうあきらめて、1.を選びました。子どものためにもなると理屈をつけて自分を納得させてですね。3.の選択肢はチラッとでも、1ミリも浮かんできませんでした。まぁ、アドラー心理学に出会う前の人間なんてそんなものです(笑)。


それで、離婚して子ども二人のシングルファーザーとして、子育て優先で暮らし始めてですね、数か月後に「嫌われる勇気」を初めて読んで、「もう嫌われる勇気あるし」とたいした感慨もなく、でも、「アドラー心理学」という言葉は残っていて、次に読んだ本あたりから野田俊作先生の方に引っ張られる縁を掴み、離婚して1年が経ったころ、アドラー心理学の子育て学習プログラムであるパセージを、大分から東京に飛行機で通いながら現日本アドラー心理学会理事のEさんから受けて、「意見と事実」を学んだところで衝撃を受けて、東京から帰ってきてすぐに、鍵野とはもう口もききたくないどころか連絡も取りたくないと言っていた元妻と子どもの用事だったと思いますが会う機会があり、そこで、「これまでひどいことをしてきて、(あなたを変えようとしてきて)ごめんなさい」と、自分の悪行を素直に謝れたのでした。ほんと、アドラー心理学マジックというか、パセージマジックというか、Eさんマジックというか… その謝罪を元妻が受け入れてくれて、そこから急速に、離婚はしているけれども、子どもを育てていく仲間として、協力し合える関係になれて、今では、結婚当時よりも仲の良い関係、子育ては卒業したのですが、親友というか本当に互いに尊敬し、信頼し合える関係に高めることができています。


ということで、アドラー心理学を学んだおかげで、3.の「自分が変わる」という選択肢を選ぶことができました。そして、当たり前なのですが、自分が変われば相手とのコミュニケーションが変わります。協力的な、自分の価値観で相手を(できるだけ)裁かない関係になれたら、相手も相手の価値観でこちらを裁くことが減っていきます。そうしたら、そりゃぁ仲良くなりますよ。正直、運命の出会いなんていうのは信じていませんが(仏教徒は運命論は否定します。すべては無常だから。因果法則はありますが)、せっかく何度も何度も価値観のぶつけ合いをした相手なんだから、データはそろってるし、その人と仲良くなる方が早いし安いしうまい(ありましたねどこかにこういうの(笑))んじゃないかなと思っています。さっきも書きましたが、あまりにも激しく価値観がぶつかり過ぎるのであれば、違うお相手と最初から始める方がいい場合もあることは否定しませんが、いったんは夫婦になれた同士であったなら、そこまでぶつかるものかなぁと思うところはあります。なので、野田先生もおっしゃってましたが、鍵野も結婚前にお試しとして3カ月は同棲することをおススメします。3カ月間ぶつかり合ってみて、でも、まぁこの後もやっていけそうな程度のぶつかり方なのかどうかは試しておいた方がいい気がします。かく言う鍵野も同棲からの結婚でした。何も隠しているつもりはなかったので、元妻も鍵野が「いつも自分が正しい」と突き進んでは家族を引っ張りまわしてしまう人であることは承知の上で一緒になってくれたんだと思っています(笑)。そこがまったく許せない人だったら、結婚はしていなかったはずです。「そうかもね、ついていってもいいかも」とついていったら、大変なことに巻き込まれたというところだったのではないかな(笑)。


まぁ、野田先生が夫婦関係の教育プログラムは作られなかったように、この問題は子育てとは違って、夫婦個別的にいろんなことがあって一概には言えないわけですが、でも、自分が正しいと相手を裁いているからうまくいかないんだというアドラー心理学が教える人間関係の本質は、夫婦関係も人間関係である以上、変わらないと思います。夫婦関係に悩まれている方は、一度、カウンセリングでも自助グループでのエピソード分析でもいいので、ご自分のユニークな価値観とそれをベースに頭の中をかけめぐっている考えと、その考えから作り出した感情と、その感情ではずみをつけて実際にやったことを、カウンセラーやお仲間とアドラー心理学の目で冷静に分析してみませんか? あなたが今困ってらっしゃる問題の出口は、昔も今も押し続けているその迷路の壁にはなくて、きっとあなたのユニークな価値観を調べてみるところから開けてくるはずです。


読んでいただきありがとうございます。

みなさまどうぞ今日もよい一日をお過ごしください。


生きとし生けるものが幸せでありますように。