アドラー心理学で一緒に考えてみませんか

アドラー心理学カウンセラーの鍵野が気になったことのあれやこれやを綴ります

誤解と相互理解

<2023年11月13日wrote>
こんにちは、鍵野です。
 今日は久しぶりに散髪に行ってきました。この「散髪」という言い方、東京では床屋に行くって言いますよね。昔、子どものころ大分から東京に引っ越した時に感じたカルチャーショックの一つでした。散髪って言わないんだぁって。その他にも、「これ直しといて」「えっ、どこか壊れてるの?」ってのもありました。東京では「仕舞う」って言いますよね、「直す」ことを、これも驚きました。その頃は大分弁が人類共通の言葉だと信じていたかもしれません。同級生に変なのって、ずいぶん笑われた気がします。違う土地に引っ越すというのは、子どもにとって、世界が変わってしまう本当に大きな出来事です。親としては、新しい世界で所属を求めて必死でがんばっているお子さんを尊敬し、その力を信頼しながら、必要なときはいつでも協力する一番の仲間でいてあげたいですね。そうすれば、親という一番頼れる仲間の存在に勇気づけられたお子さんは、その所属の危機を大事なことを学ぶよい機会に変えて、大きく成長してくれることと思います。うちの息子も、私と全く逆バージョンで、小学2年のときに東京から大分に、親父の都合で引っ越しました。大分県内でも2回引っ越して、何度か転校を経験して、いろいろつらいこともあったようですが、大事なことをたくさん学んでくれたようで、友達を大切にする優しくて何事も人のせいにしない立派な人に成長してくれました。あのとき思い切って大分に来てよかったと思っています。
「散髪」とか「直す」もそうですが、小さければ小さいほど、自分の知っていることは相手も知っている前提で話しますよね。会ったことあるわけもないのに、きょうだいとかおばあちゃんのことを、他の人も当然知ってると思って、話していた娘が、「私ね兄ちゃんがいるんだけど、もう中学生なんよ、でね…」とか、他の人に説明しながら話しているのを聞いた時、ずいぶん成長したなぁと思った事を思い出しました。それで、実は、程度の差こそあれ、大人になった今でも、私たちは人に何かを話すとき、かなりのところを相手も知っている前提で話しています。これ、カウンセリングをしているとよくわかります。その人のライフスタイルに関わる大事な価値観に触れるところになればなるほど、その人はそれ以外の現実がありえないくらい信じ切って頼り切ってその価値観で暮らしていますから、相手もそう思わないということが信じられないんですね。
※架空の事例です
カウンセラー:今日はどのようなお話でしょうか?
Aさん:子どもがねぇ、小3の娘なんですけど…全然約束守らないんですよ。いつも厳しく言うんですけど、懲りないっていうか… こんなことじゃ将来ろくな大人にならないんじゃないかと心配で…
カウンセラー:最近あった具体的な出来事についてお話いただけませんか?
Aさん:はい。昨日もあったんですよ。えっと…だから一昨日になるのかな、娘にね、「明日は夕方6時までにおばあちゃんの家に行かなきゃいけないから、あなた一人にしておけないし、一緒に行くから、それまでに家で宿題済ましててね、約束よ」って言ったんですよ。「わかった」って返事したんですよ、あの子ちゃんと。それなのに、昨日帰ってきたら、のんきにゲームしてて、「宿題終わったの?」って聞いたら、「あっ、忘れてた!」なぁんて言うんですよ、それで、もう頭に来ちゃって「昨日、約束したじゃないの! もう~あんたって子は、どういうつもりなのよ!」「…だから、忘れたって…」「もう~、また約束破って! もうお母さん、あんたのこと信用できないわ」って、そしたら泣き出しちゃって、もうおばあちゃん家行かないって言い出して… そこからもうすったもんだで、なだめすかしてようやく連れて行ったんですけど… 毎回こんなことじゃ、もう疲れちゃって…どうしたらいいんですかねぇ?
カウンセラー:うーん…、何に一番困ってらっしゃいますか?
Aさん:え? 約束守らないことですよ。だって、約束守るのって当たり前じゃないですか。こんな子どものうちから約束守れないんじゃ、もうこの先どうなっちゃうんだろうって。
カウンセラー:娘さんが約束守らないとAさんがどう困るんでしょうか?
Aさん:そりゃぁ、だって、こっちはそれに合わせて予定を組んで、仕事とか母とか他の人の予定も調整して動いているのに、約束破られたら全部台無しになっちゃうじゃないですか。
カウンセラー:「約束」ってAさんにとってどういうものなのか、もう少し教えていただけませんか?
Aさん:えっ…約束は約束ですよ! 世の中全部お互いの約束で動いているじゃないですか。今日だって、こちらの予約時間に約束通り来たから、こうして相談できてるわけだし…
カウンセラー:ひょっとして、Aさんにとって、約束って必ず守るものなんですか?
Aさん:えっ? 当たり前じゃないですか、だって約束ですよ。守れない約束なんかしたら詐欺ですよ。
カウンセラー:そうなんですね… それでAさん、これまでに約束したけどどうしても守れなかったことって何かありませんか?
Aさん:え? 私は約束は……あぁ、あの…娘メロンパンが大好物なんですよ、それでちょっと前の話ですけど、その日出がけに「明日のパン何がいい?」って娘に聞いたんです、うち朝はパンが多いんです。で、「あのメロンパンお願い」って言うから「わかった」って、まぁ約束は約束ですよね…これも。で、帰りにそのパン屋さんに行ったらいつもあるはずのメロンパンがなくて、なんかたまたまたくさん買っていった人がいたらしくて… それで、代わりに、チョココロネだったかな、そんなのを買って帰ったんですけど、娘に「え~楽しみにしてたのに~」って文句言われて、「しょうがないでしょ!なかったんだから。文句言わないでよ!チョココロネだって好きじゃないのあんた!」って言ったっていうのはあったかなぁ…
カウンセラー:そうなんですね…。
Aさん:でも、それとこれとは違いますよ、ねぇ… だってしょうがないことってありますもの…
カウンセラー:さっきのお話で、娘さん、「忘れた」っておっしゃってたと思うんですが、その辺りの理由というか事情というかについて何か聞かれましたか?
Aさん:いえ… そうですね… 何かあの子なりに事情があったかもしれませんよねぇ…たしかに。
カウンセラー:うーん… まぁ聞いてみないとわからないんですけどね…
Aさん:今度、同じようなことがあったらなるべく聞いてみるようにします。
カウンセラー:そうですね、何かわかることがあるかもしれませんよね… それで、ちょっと気になったんですけど、娘さんにとっての「約束」ってAさんにとっての「約束」と、同じなんですかね? 
Aさん:えっ? …… はぁ、そうか…考えてみたこともなかったなぁ…うーん、どうなんだろう?  
という感じでですね、相談者さんが当たり前と思っていることをそうじゃないかもしれませんよと解きほぐしていくことで、「正しい私、間違っているあなた」が緩んで、お互いよく間違うけど許し合って助け合って暮らしていく協力への道が見えてくることが多いんですね。
自分の当たり前が当たり前ではなくて、相手の不思議になってるかもしれないと思って暮らせるようになると、互いにもう少し丁寧に自分の考えを相手に説明する気になれるかもしれませんね。
昔懐かしい、ヤッターマンのナレーションのように「説明しよう~は~のであーる」と、互いに自分のこだわりポイントを説明出来たら、相互理解の日も近いかもしれませんね(笑)。
読んでいただきありがとうございます。
みなさま今週もどうぞよい一週間をお過ごしください。
生きとし生けるものが幸せでありますように。