<2023年11月19日wrote>
こんにちは、鍵野です。
日曜日の午後、まったりといい感じで過ごしています。朝は寒かったリビングも日差しで暖まって快適だし、電車が走らないときに聞こえるのは鳥の鳴き声くらいなもので、同じ地球上に鉄砲だのミサイルだのが飛び交く音を聞かざるを得ない人たちがたくさんいる中で、本当にありがたいことです。
アドラー心理学は、陰性感情を感じる困った場面で、人は、相対的マイナスから相対的プラスに向かって行動するものだと考えます。相対的というのは、誰でも絶対的にそうだという意味ではなくて、その人がその場面でマイナスと感じたりプラスと感じたりするという意味です。ある人にとってマイナスと感じることでも他の人にとってはなんとも感じなかったり、プラスに感じたりすることがあります。例えば、親の手伝いをしているところを近所のおばさんに見られて「えらいわねぇ!」と言われて嬉しくなる子もいるけれど、「こんなん、いっつもしてることやし、当たり前やん。バカにせんといて、もう小っちゃい子と違うし!」と感じる子もいたりします(なぜか関西弁、誰かをイメージしてしまった(笑))。
それで、「エピソード分析」前のカウンセリングでは、相談者さんのその場面での感情と思考を明らかにすることで、この相対的マイナスから相対的プラスの動きを知ります。その動きを知った上で、次に相手と協力的な方向に動けるように援助をしていきます。ところが、この「感情と思考を明らかにする」のが、はなはだやっかいな仕事でして、英語とかドイツ語とか西欧の言語であれば、話す方も聞く方も感情と思考がしっかり分別されているので、すぐに明らかになるんですが、日本語だとその辺がとても曖昧で困ってしまうというわけなんです。「どう感じましたか?」と聞いても、「なんだかバカにされたように感じました!」とか、これ思考ですよね、どっちかというと。それで「どんな風に考えられましたか?」と聞いても、「とっても悲しくなっちゃってですね…」とか、これ感情ですよね。慣れればわかるし、みなさん訓練したらできるようになるとは思うんですけれど、難しいことは難しいんです。ところがですね、天才野田俊作先生の開発された「エピソード分析」は、そのややこしいところが全然なくてシンプルで一目瞭然なんです。エピソードを話してもらえばわかること、実際の相談者の行動に着目して、その行動から、相対的マイナスと相対的プラスを描き出すことができるんです。「どう感じた?」とか「どう考えた?」とかなしでも。詳しくは、野田俊作顕彰財団(AIJ)のパセージプラスか基礎講座応用編を受講してもらえば教えてもらえますが、とにかくコロンブスの卵というか、画期的な手法なんです。
と、ここまではカウンセリングをする人、カウンセラーにとっての関心事であって、大方の人には関係ないかもしれません。なので、カウンセリングができればいいので、「エピソード分析」の方が習うのが楽という点にしか注目されない方もいるんですが…じつは、「エピソード分析」の価値は、そんな小さなところにあるんじゃないんです。学びやすくなることで、アドラー心理学カウンセラーが、もっと増えたらそりゃぁいいことだし嬉しいですけれど、でも、どうせカウンセラーになろうなんて人は、そこまで根性のある人(アドラー心理学に引っかかる人(笑))は、そんなに多いわけないんです。じつはですね、「エピソード分析」の本当の価値は、カウンセラーじゃない人でも、相対的マイナスから相対的プラスというその人のライフスタイルに沿った動きの分析ができるようになるということにあるんですね。
パセージプラスを受講すると、グループで互いのエピソードを「エピソード分析」することができるようになります。慣れれば自分のエピソードを自分で分析することもできます。これが凄いことなんです! カウンセリングを受けなくても、特別なワークショップに参加しなくても、自分のライフスタイルを知ることで(ライフスタイルそのものを扱うわけではありませんが)、飛躍的にアドラー心理学の実践がしやすくなるんです。自助グループのメンバー同士で「エピソード分析」をできるようにしておけば、アドラー心理学の理論に沿った精度の高い代替案を自分たちだけで見出すことができるようになります。カウンセラーを増やしたいのもあったとは思いますが、それだけじゃなくて、ここが、野田先生の本当の狙いであり願いだったんじゃないかなと思っています。日本に暮らす一人でも多くの人たちが、競合から抜け出して協力的に幸せに暮らしていくために、「エピソード分析」という手法を開発して残してくださったのだと思っています。カウンセリング手法としてどっちが優れているかなぁんて次元の話ではないと、もっともっとスケールの大きい、日本語話者が共同体感覚を発揮して、自分たちだけでなく世界に貢献していくための、そのための大事な手がかり足がかりとして、開発されたのが「エピソード分析」だと思っています。
ということで、ホワイトボードとかを使わずにカウンセリングする方が、自分の好みではあるんですが、カウンセリングという関心事を超えて、「エピソード分析」の普及に貢献したいなぁと、書きながらあらためて思いました。そういう意味で、「エピソード分析」を日本アドラー心理学会が捨てたように見えるのが残念です…。パセージと違って「エピソード分析」は商標でもないんだし、どんどん使っていけばいいのになぁと…。おっと、人のせいにしてはいけませんね。鍵野も日本アドラー心理学会員なのだから、「エピソード分析」の実践報告でも学会誌に投稿していけばいいだけかも(投稿規定に「エピソード分析」に関するものは除くとかないしね(笑))。野田俊作顕彰財団(AIJ)ができてよかった! 誰かのセリフじゃないけれど、「(みんなの)「エピソード分析」は永久に不滅です!」。一人でも多くの方が「エピソード分析」を身に付けられますように、鍵野もできる限りのことをしていきたいと思っています。
読んでいただきありがとうございます。
みなさまどうぞよい夜をお過ごしください。
生きとし生けるものが幸せでありますように。