アドラー心理学で一緒に考えてみませんか

アドラー心理学カウンセラーの鍵野が気になったことのあれやこれやを綴ります

記憶は変わる

<2023年10月27日wrote>
こんにちは、鍵野です。
嬉しいことがありました(知りました)。九州にパセージリーダーさんが一人増えました。他から引っ越して来られたので、日本というスケールでは数は変わっていないのですが、九州ではパセージリーダーさんがほとんどいない状況(おそらく1名?)になっていたので、+1は本当に大きな+1です。大分県の方ではありませんが、メンバーが6人以上集まって、パセージ開催をお願いしたら来てくださると思います。実現する日を楽しみに、できる限りアドラー心理学の普及に努めていきます。
 そして、面白い記事を読みました。イェール大学のジョイ・ハーシュ氏の研究で、オンラインでの対話とリアル対面での対話で、脳の神経信号の強度が全然違うということです。もちろん、リアル対面の方が神経信号の強度が増していて、オンラインでは劇的に下がるそうです。直感的にも経験的にもそうだろうなぁと思っていたことを裏付ける研究結果でした。対面で会話している人同士では、より協調的な神経活動が見られるそうです。オンライン(Zoom)でのやり取りではそういった活動はあまり目立たないか存在しないように見えると言っています。やっぱりなぁと思いました。オンラインでのカウンセリングは原則しないのですが、本当になんだか話をしていても実感が薄いというか、アドラー心理学カウンセリングというのは一歩間違えれば相手の人生を壊しかねない、強力な科学技術(だから援助できる)なので、相談者の言葉だけでなく身体全体と、カウンセラーの言葉と身体全体とがコミュニケーションして交感しながら進めないと本当に危ないんです。かなりの遠方から来られる方もいらっしゃるので、負担が多くなってしまうのですが、これからもこの方針で行こうとあらためて思えた記事でした。パセージが対面での開催限定を貫いてオンライン対応しなかったのも、やっぱりよかった!と思いました。
さて、今日は記憶について考えてみたいと思います。昨日の昼ご飯に何を召し上がりましたか? 私は、のり弁です。のり弁フェアの幟に誘われて、ものすごく久しぶりにお弁当屋さんに行きました。待つんですが、待っただけあるというか、レンチンとは違う出来立ての熱さ温かさで美味しくいただけました。フェア価格で30円引きの360円でした(笑)、安い! …といったように、昨日のことから、小さなころのことまで、私たちはいろんなことを記憶しています。それで、この記憶ですが、本当にそんな出来事があったんでしょうか? 「そりゃぁあったから記憶してるんでしょ、なかったら記憶できないじゃない」という方もいらっしゃると思います。でも、ですね…アドラー心理学では、その人の記憶した通りに、事実として実際にその出来事が、その通りに起きたとは考えません。その人の記憶は、あくまでもその人のフィルター(統覚バイアスと言いますが)を通して感覚されたものだし、その人のライフスタイル(価値観)に都合がいいように解釈されて記憶されます。「フェア価格で30円引きの360円でした」は、鍵野のライフスタイルからは重要な情報らしいです(笑)。同じお弁当屋さんに同じ時間に居た人も数名いましたが、その人はその人のライフスタイルに沿ってその人にとって必要と思われることを記憶しているはずです。で、ですね、アドラー心理学カウンセリングでは、相談に来られた方に最近起きたこと、エピソードを話してもらいます。いつもこうなんですという話ではなく、ある日ある時に一回だけ起こった出来事をです。それで、カウンセラーは、話してもらったことが事実そのまま本当に起こったことだとは思っていません、というか気にしていません(裁判をしているわけではないので(笑))。大事なのは、その人にとってはそれが事実で現実に起こったことだということです。あることが起きて、そのとき何を感じて何を考えたのか、そしてどういう行動を取ったのかを聞くことで、その人が、あることを大事にしている人でその結果としてそこで起こったことに劣等感を感じて、その人の大事にしていることの実現を目指して行動して、結果としてうまくいっていないということがわかります。現場検証的に、そこで起こった客観的事実がわかったとしても、その人のことは何もわかりません(カウンセリングの中で出来事を自分の視点から離れて見てもらうために使うことはありますが)。
それで、アドラー心理学でとりわけ大事にしているのが、小さい頃の記憶です(だいたい10歳ころまで、思い出しやすいようにちょっとまけて小学校卒業までと言ったりします)。「早期回想」と呼んでいるんですが、昨日ののり弁の話ではなく、小さい頃の出来事を今の今まで大事に持っているということは、それが、やっぱりのり弁の話だったとしても、もし6才の頃ののり弁に関する思い出だったならば、それはその人のライフスタイルをくっきり表している、とても大事な情報になります。アドラー心理学は取りたい放題の宝物庫とも呼ばれていて、いろんな心理学がアドラー先生やお弟子さんの名前を出さすにちゃっかり使っている考えや技術がたくさんあるんですが、この「早期回想」からのライフスタイル分析だけは、あまりにもアドラー臭いからか持って行かなかったようです(笑)。早期回想分析のできないカウンセラーはもぐりだとどこかで野田先生もおっしゃってましたし、アドラー派としては早期回想分析は大事なお家芸としてこれからも伝えて行かないといけないですね。昨日の記憶でも実際に起きたかどうかはある意味どうでもいいので、早期回想ならばいわんやをやです(この表現最近好きなんです(笑))。実際、カウンセリングをしていくと、この小さい頃の記憶、早期回想は変わっていきます。最初に聞いた早期回想が、その人のライフスタイルが成長して変わっていくと、そのライフスタイルに合わせて変わります。なので、早期回想がアドラー心理学的によい方向に共同体感覚をより発揮している方向に変わったことを、カウンセリングがうまくいっていることの試金石にすることもあります。
というわけで、過去は変えられないから、今できることを明るい未来のためにというのがアドラー心理学の考え方ですが、じつは過去も変わるんです、というお話でした。
読んでいただきありがとうございます。
みなさまどうぞよい週末をお過ごしください。
生きとし生けるものが幸せでありますように。