アドラー心理学で一緒に考えてみませんか

アドラー心理学カウンセラーの鍵野が気になったことのあれやこれやを綴ります

陰性感情をなくしたい

こんばんは、鍵野です。
8月も今週で終わりですね。今、網戸にしたら結構涼しい感じで、クーラー止めて扇風機に切り替えました。ひょっとしたら台風が近づいているせいもあるのかもしれませんが、夏の暑さもピークは越えたのかな。虫の声が涼し気に聞こえてきます。


ときどき、マイナスの感情、怒り、悲しみ、不安、後悔などの陰性感情をなくしたいとおっしゃる方がおられます。たしかにイヤですものね陰性感情って、疲れるし。できるだけそれを感じずに暮らすことができたら楽だろうなと思われるのはよくわかります。よくわかるんですが、アドラー心理学では、陰性感情をなくそうとか減らそうとか、そういうアプローチは取りません。


陰性感情をなくそうとか減らそうではなくて、気づきましょうと言ってます。自分の陰性感情に気づくところからアドラー心理学の実践が始まります。


そんなの、いつだって気づいてるよ!、という方がいらっしゃるかもしれませんが、気づいて欲しいのはどういうときに陰性感情が起こるのか(本当は自分で作っているというのがアドラー心理学の見方ですが、無意識的なものなので、起こると言っておきます)です。


カウンセリングでは、相談に来られた方に、陰性感情があったある日ある所で一回だけ起こった出来事(これを「エピソード」と言ってますが)を話していただきます。


その出来事のどの場面で、誰がどんなことをしたときに陰性感情が起こったのかを手掛かりに、その方のライフスタイル、ライフスタイルそのものにまでは迫れなかったとしても、その方が大事にしている価値観(私的感覚と言います)を調べていきます。


それで、陰性感情があったということは、まさにその場面である人のとったある行動に対して劣等感を感じていたということだと判断して、その劣等感を補償するための目標、その人の価値観を満足するようなその場面での無意識的な目標(仮想的目標と言います)を推測します。


その仮想的目標を、相談者と一緒に意識化していくところがカウンセリングの一つの山場になるんですが、相談者の感情と思考からアプローチするやり方と、相談者の目標実現のための行動からアプローチするやり方があります。後者のやり方を「エピソード分析」と呼んでいて、感情と思考をはっきり区別して語る習慣のない日本語話者のエピソードでもしっかり分析できるようにと野田先生が晩年に開発された方法です。今回の趣旨からは外れるので詳しくは書きませんが、「エピソード分析」には、それだけではなくてもっと深い意味もあるんだなぁと、使い込んでいってわかってきたことがあって、それは前に少し書いたんですが、また機会があれば書きながら考えてみたいと思っています。


目標を意識化できれば、そのまま目標を実現してよいのか、あるいは目標を変えた方がよいのか選ぶことができるようになります(このとき、自分だけでなく相手も嬉しくなるような目標を選ぶようお勧めするのがアドラー心理学です)。


もちろん分析しているのは過去の出来事なので、客観的に同じことが起こることはあり得ないのですが、でも、主観的には、人はいつも同じことに怒ったり悲しんだり不安になったり後悔したりを繰り返しているので、一度、その時の仮想的目標を意識化しておくと、似たような場面で、自分の仮想的目標をある程度意識できるようになるんです。


目標を意識して、そのままか変えるかして、実現してよい目標だと確認できれば、その目標実現のためによいと思われる行動を選択して実行すればいいわけです。


行動についても、カウンセラーと相談しながら、こうした方がよさそうという行動を決めて、似たような場面ですぐできるようにある程度練習しておきます(あるいはすぐできるような行動を選んでおきます)。


そうした一連の準備が整った上で、次に似たような場面に出くわすと、カウンセリングを受ける前とは違って、練習に沿った目標の意識化とよりよい行動の選択ができるようになるので、それまでとは違う結果が、相手も自分も嬉しい方向の結果が得られるようになっていきます。


するとどうでしょう! 不思議なことに(不思議ではないんですが(笑))、慣れれば慣れるほどその似たような場面では陰性感情が小さくなってあまり起こらなくなっていきます。


なぜかと言えば、陰性感情はもともと(無意識的にではあっても)自分が作り出していたからです。劣等感を補償する目標実現のために、行動を起こすエネルギーとして、わざわざ自分で陰性感情を作り出していたんですが、目標を意識化して、目標と行動を選ぶことで、より好ましい結果が得られると知ってしまったあなたは、もうそんな無駄な疲れることをする必要がないことに(無意識的に)気づいて、そんな大袈裟な陰性感情をわざわざ作らなくなっていくからです。


そうやって、結果として陰性感情は小さくなり、場合によっては、ほとんどなくなってしまうこともあるんですが、それはアドラー心理学を学んで実践する目的ではなくてあくまで結果に過ぎないというのが、今日書きたかったことでした。


鍵野もいつの間にかほとんど陰性感情を感じることなく過ごしている日が多くなっています。一瞬、おそらくマイナス5~0という陰性感情のスケールがあるとしたら、0.1くらいの陰性感情を感じても、すぐに目標を意識化して、必要があれば相手と折り合えそうな目標にスイッチしてから、目標実現のための行動を選ぶことができるので(これを脳内「エピソード分析」と言います(笑))、対人関係のトラブルは滅多に経験しなくなりました(昔はこちらの都合を考えていない(と思えるような)対応をされたら怒り心頭、アドレナリン全開でワナワナしながら、相手を正してやろうと行動していたものですが(笑))。


陰性感情はあったとしても、自分だけがよければではなく、相手も自分もよくなるような目標実現のための行動を選ぶのが、アドラー心理学を実践するということです。何らかの方法で陰性感情を感じなくなれたとしても、自分さえよければいいというのはアドラー心理学ではありません。自分の快不快とは関係なく、自分も含めたみんなのために考えて行動しようね、というのがアドラー心理学なので。人間は不完全な存在なのでどこまでいっても完ぺきなアドラー心理学実践者、完ぺきなアドレリアンにはなれませんが、それでもそこへ向けて少しずつ進むことはできると思います。


もし陰性感情に困ってらっしゃるのであれば、とりあえず陰性感情に気づくところから始めてみてください。自分は何に腹を立てる人なのか? 何に悲しくなる人なのか? 何に不安になる人なのか? そして、何に後悔する人なのか? なんでそうなんだろう?って、それを不思議がることができる人であれば、アドラー心理学を学んで実践さえすれば、思ったよりも早く出口をみつけられるはずです。


目的にはしないとは言いましたが、いちいち怒ったり悲しんだり不安になったり後悔したりしない暮らしは、やっぱり楽だし、他にエネルギーを回せるし、周りの人と仲良くしやすいし、おススメではあります。


よろしければ、一緒に学んでいきましょう。「カウンセリング」というと身構えててしまう方もおられるようなので、単にアドラー心理学を学びたいということで全然構いません。お一人お一人にあった学び方も提案できますので、お気軽にお問い合わせください。よろしくお願いいたします。


今日も読んでいただきありがとうございます。

みなさまどうぞよい夜をお過ごしください。


生きとし生けるものが幸せでありますように。